__________________________________________________________________________ サイバービジネス最前線! ■■-週刊ネットエイジ-■■ __________________________________________________________________________ Tuesday, Jan 5, 1999 __________________________________________________________________________ 第24号 発行2555部 (自社サイト:998部 まぐまぐ:1227部 Macky!:293部) __________________________________________________________________________ ☆★☆ A Happy New Year! 1999 ☆★☆ □ 新春初夢企画! 日本を変えよう!ベンチャー 5万社創出計画! □ __________________________________________________________________________ あけましておめでとうございます。今年も週刊ネットエイジをご愛読いただきま すよう、よろしくお願いいたします。さて、新春ですから、思いっきり想像力の の翼を広げて初夢企画といきましょう。これは、ズバリ日本政府への提案です。 もとより、実現の可能性については、有力政治家のコネでもないかぎり難しいの はわかっています。でもひょっとしてひょうたんから駒でもでないかなー、と淡 い期待ももっております。読者の中でどなたか政府関係の方いらっしゃいましたら、 小渕さん、堺屋さんあたりにフォワードしてさしあげてくださーい。では前置き はこのくらいにして、さっそく、本文スタート! --------------------------------------------------------------------- ◆いつのまにか豆腐屋さんになった日本政府? 1999年が始まった。日本経済は戦後最大の大不況といわれ、昨年以来、16兆円の 総合経済対策、9兆円の減税、60兆円の金融破綻対策費などが次々に決断された。 おかげで、われわれは、政府のくりだす「兆」の文字に不感症になってしまった。 そしてとどめは 81兆円の史上最大の 99年度国家予算である。 以前、住専問題で、6350億の支出をめぐって大騒ぎしたのがうそのようである。 もう「チョー」の単位でないと誰もなんとも思わない。「あちらへ1チョー、こ ちらへ2チョー」と、まるで政府は威勢のいい豆腐屋さんになったかのようだ。 ところが、やはり「兆」という金額は凄いのである。どのくらい凄いか、という と、"わずか"1兆円をもってすれば、使い方次第で日本を再生できるかもしれない くらい凄いのである。ではどうやって使うのか、それがこの初夢企画、「ベンチ ャー5万社創出計画」である。 ◆このままでは 開業率の低下は止まらない 総務庁で毎年開業率の統計をとっている。開業率とは、その年の新規開業した会 社の数を年末の全会社数で割ったものだ。アメリカではこれが90年台前半の13%か らじりじりと上昇し、いまや15%に迫ろうとしているが、日本では、90年台前半が 4.5%ともともと低いのに、いまや3.5%近くまで落ち込んでいる。 これは「経済の構造改革」という国家的な観点からは非常にまずい傾向である。 やはり新しい経済構造には新しい企業群が主要メンバーになるべき、 というか、そのほうが何かとスムーズなはずだ。また、将来の雇用という観点か らも、既存企業には雇用増を期待できない。やはり、新しい企業が伸びていって 雇用を吸収するのが本来あるべき姿である。これには誰も異論はなかろう。 ところが、個人のレベルに転じて起業状況を考えると、さもありなん、という現 実がある。どの家計も将来不安にそなえ、守りの体制に入っている。仮にいいア イデアと創業のやる気があっても、全ての貯蓄やなけなしの退職金をはたいて 「創業したいんだ」といって妻を説得できるものは少数だろう。リクルートの"創 業情報誌"「アントレ」も創刊時よりずいぶん厚さが薄くなってきたような気もす る。このままでは政府の期待もむなしく開業率は低下する一方だ。 ◆くすぶる30代は国家損失だ 個人的にあまり買ったことはないのだが、扶桑社の「SPA!」という雑誌の車内吊 り見出しはなかなか辛辣で人目をひく。「20代、30代で早くも社内失業」とか、 「バブル期入社組への社内いじめの実態」とか、まあ、その手の話題だ。25歳か ら35歳(これをこの雑誌は勝手にSPA!世代と命名している)は本来やる気満々の 世代のはずだが、せっかく素材として優秀だった人材も不運な会社の不運な処遇 で、本来の実力を発揮できる場を与えられず、くすぶっている人も少なくないの ではなかろうか。所詮国民経済は、一人一人の創意工夫とやる気と働きぶりの総 和であり、この状態は国家経済力上の大損失ともいえる。 くすぶっている彼らの多くはシニカルで惰性的な毎日を送っているだろうが、そ の一部には「本来の自分はこんなものではない」と自負し「思い切って起業しよ うか」という者も少なからずいるはずだ。ところが、先立つもの(=創業資金)が なく、身動きがとれず悶々とした日々を送っている者が多いであろうことは想像 に難くない。 ◆ 1兆/2000万=5万! そこで登場するのが、この「ベンチャー5万社創出計画」である。 まず、国家予算から1兆円を用意する。そして、創業者を大募集し、1社あたり 2000万円を投資するのである。割り算してみると、1兆円あれば、なんと5万社を 創出できる計算だ。 本来「起業家精神」は「国からの援助」を潔しとしないものかもしれないが、 それを承知の上で、現下の経済状況のもとで、実をとろうという提案である。 ◆ 新聞広告のアウトラインは、こんな感じで... ★★★ 日本政府がベンチャー創業資金2000万円をあなたに投資!★★★ 「21世紀の日本を担うベンチャー5万社創出プラン!!」 ●これから起業したい人大募集!日本の未来をつくろう!! ●国家が創業資金として2000万円をあなたの創業する会社に投資します! ●ただし、あなた自身も最低500万円以上を調達し、自己リスクをはってくださ い。この合計 2500万円で、がんばって成功してください。 ●創業資金がそれでも足りなければ、国民金融公庫なども融資で応援します。 ●形式上は国家が大株主ですが、あなたにすべて経営権を委ねます。ただ、四半 期ごとの経営報告は、国が委託するVCにちゃんと提出してください。 ●成功の暁には、そのお金で国家から全株式を買い取り、あなたがオーナーになっ ていただきます。(いわゆるマネジメントバイアウトですね)なお株価を算定す る際、国家としての IRR(投資収益率)は 10%くらいで結構です。 ●失敗して倒産しても、この2000万円は借金ではないので、国家への返済の義務 はありません。 ●仮に失敗しても、このプランで成功した他のベンチャーに就職できるよう斡旋 しますので、まあなんとか食えるでしょう。 応募資格: ●年齢 35歳まで(やはり若い世代に創業してほしい。それに40代なら早期退職制 度などで創業資金は自己調達できる場合も多いだろう) ●あなた自身で500万円を調達できること。個人の貯蓄でも、友人、親からの出資 でも可。(そのくらいの信用力および自己リスクをとる態度がないとだめ) ●用意された10ページほどの「ビジネスプランシート」をまともに埋められるだ けの実態のあるビジネスアイデア・ビジネスプランと最低限の経営常識。 ●面接で人柄や熱意など起業家としての基本要件をチェックします。 審査方法: ●国内の主要ベンチャーキャピタル会社50社を総動員して審査を委託します。 (1兆円のうちの数%をこれらのVCにマネジメントフィーとして支払う。 1社あた り平均 1000のビジネスプランを審査決定することになる。その後の面倒も、四半 期経営指導から MBOの実務まで委託する。さあ、VC各社は大忙しだ) ●まずビジネスプランによる書類審査をします。受領後1週間以内で合否をお伝え します。 ●次に面接をします。面接後、1週間で合否をお伝えします。合格したら、即現在 の職場に退社届を出して、起業にむけてダッシュしてください。 ●このように、ビジネスプランを書き上げてからわずか2週間であなたの運命が決 まります。さあ、キミも今すぐビジネスプランを書き始め、どんどん応募しよう! ------------------------------------------------------------------------ ◆ 創業すると300%の力がでる! このようないい条件での募集で、まさか応募が5万人に満たない、という事態はな いとは思う。もし万一そうなら、これは「本当に」日本の将来に暗澹とせざるを 得ない。そこまで、この国のSPA!世代は無気力なのか、と。 まあ、そんなことはない、と信じよう。そしてこの大変革期に国家の期待を担っ て5万人の若武者が船出するのである。(あまりプレッシャーをかけすぎるのもよ くないか(^^;) (やや本気で心配なのは、応募のうち、まともなビジネスプランがいったい何件 あるか、である。ある程度審査は甘くしないと、5万社に達しないかもしれない。 本来はもっと大学や大学院で起業家教育を充実させねばならないのだ) ちなみに自分自身の経験でいうと、創業すると、サラリーマン時代と比べ、まず 無駄な会議とかつまらない社内調整などの時間が一切なくなるので、3割は時間が 増える。また残業しても土日勤務してもすべて自分のためなので、全然気になら ないため、これまた自然に5割は時間が増える。こうして実質的な仕事時間がサラ リーマン時代より倍増するのである。しかも、背水の陣での真剣勝負であるから、 知恵もアイデアも泉のごとく湧き出る。なんの制約もなく精力的に動き回れる。 その結果、時間あたりの密度がやはり5割は増える。こうして、ざっとサラリーマ ン時代の300%の力がでてしまうのだ。5万人が300%の力をだせばこれだけでもすご いことだ。 ◆ 需要や雇用創出の直接効果も絶大!さらに投資収益もあるかも! 5万社が創業すれば、オフィス需要も上がり、OA機器、パソコン、その他創業に必 要な需要が自ずと喚起される。まあ、2500万円のうち、1000万円くらいは、なん だかんだと1年以内につかってしまうであろうから、それだけで5万x1000万= 5000億円の直接需要創出効果がある。 また、多分ほとんどの会社は3名くらいの社員を雇うだろうから、社内失業してい た(?)起業家自身をカウントして5万x4=20万人の雇用増大効果。労働省も大 いに喜ぶだろう。もちろん、さらに各創業企業の成長に応じてどんどん雇用増が 期待できる。 さらには、この1兆円は投資であって、費消してしまうものではない。成功企業の 創業者のMBOによってもしかすると5年後1.5倍になって国家にもどってくるかも しれないのだ。まあ、そううまい話は多くはないだろうが、少なくとも従来型の 公共投資よりは、財政を悪化させずに経済再生を図れる可能性がある。 ◆ 第2のソニー、ホンダ、あるいは、マイクロソフト、はたまたアマゾン・ドッ ト・コムはでるか。 5万社創出が首尾よく実現したとして、これらのその後はどうなるだろう。5年後 の2004年における状況は、直感だが、0.1% つまり1000社に1社は大成功のメガベン チャーの道を歩み、4.9%は十分な成功、 15%はなんとかがんばって正念場の成長 中、 20%はリビングデッド、つまり倒産もしないが成長もしない。10%はどこか別 の企業によって吸収されている。そして残りの50%は倒産だ。 まあまあ成功以上の20%でも1万社。それらが1社平均50名、トータル50万人を雇用 し、1社平均 2000万円の法人税を払っているだろう。これだけで2000億円だ。 国家としては十分すぎるほどもとがとれる。 5万社のうちスーパースター企業はわずか0.1%でも50社もある。このなかに第二の ソニーあるいは、マイクロソフト、アマゾンコムなみの会社がでてくるかもしれな い。というより、1000社に1社くらいなら、出る確率のほうが高い、といえないだ ろうか。日本人の知恵はそのくらいたいしたものだからだ。 ◆ 結果として「ネット経済」の推進につながるという期待 先週号につづいて、今回も直接は「インターネットビジネス」に関連してはいない。 しかし、私は、この5万社のうちの少なからずの部分が結果として「インターネッ トビジネス」関連になる予感がある。やはり、どう考えても、この分野に無限のビ ジネスチャンスがころがっているのだから、理論的な帰結としてこの分野を志す 者が多数でてくるだろう。5万社のうち 5000社でも「ネット経済」の同志企業が 出現するなら、これはすごいことだ。一挙にアメリカにキャッチアップできる可 能性がある。 ◆ なんだか、書いているうちに本気になってきた この初夢企画、年末のあわただしいなか、「とにかく一発、めちゃくちゃ元気の 出る、景気のいい話を書こう」と思いながら構想をあたためていたのだが、こう して書いていると、あながち夢物語ではない、というか実現させないともったい ないような気がしてきてしまった。もちろん、優秀な官僚なら「このプランが実 現できない理由」をあげろといわれれば、100や200はすぐ上げられるだろう。し かし、今は、国家100年の計を図る「構想力」が必要な時であり、細かいことを言 って足を引っ張りあっている時ではなかろうと思うのだが...。 81兆のうち、わずか1兆円の予算をこのように使えば、こんな夢と希望が持てるの だ。1兆なんて橋や道路を作るのをちょっと控えれば簡単に捻出できるのだ。 ...と言うは易し、しかし現実は予算配分率の動かざること岩のごとし。政治の現 実を思うと、実現はきわめて困難だろう。結局のところ、誰が悪いのかというと、 こういうことがどんどん実現できないような政治を選んでいるわれわれ選挙民自 身が悪かったりするわけである。 (^^;;; 悔しいが、この文脈に入ると、私には「打つ手なし」となる。しかし「地域振興 券」のような奇想天外な政策だって実現するのだから、こんなアイデアもなんと かならないでしょうかねえ。誰かいい知恵、いい人脈ルートあったら教えてほし いものです。(樋口廣太郎さんにでも直言してみようかなあ。果たして、会って くれるだろうか?) ------------★--------------------★---------------------★------------- 新春初夢企画、いかがでしたでしょうか。また次号からは、ネットビジネスねた に戻しますので、ご期待ください。 とりあえず、ネットエイジは、日本政府をあまりあてにせず、今年もがんばりま す。では皆様、今年もよろしく!! ========================================================================== (訂正) 先回の原稿で、Amazon.comのJeff Bezos氏の現在の個人資産を約3600億円と推定 しましたが、これは約7000億円の間違いでした。(いずれにせよ、ため息....) ところで、日経の1月1日朝刊のトップの第一行にベゾスがバンカーストラスト出 身であるかのように書いてあるが、これはヘッジファンドのD.E.Shawが正解です。 日経に訂正記事でるかな? (西川 潔 = nishikaw@netage.co.jp) __________________________________________________________________________ 配信停止、メールアドレスの変更などについてはnacr@netage.co.jpまで ご連絡ください。迅速に対応させていただきます。 (アドレス変更は一度配信を解除した後、再登録してください。) ※MagMag および Macky! 経由の方は各サイトでお願いします。) __________________________________________________________________________ ■■-週刊ネットエイジ-■■ 執筆:西川 潔 発行:週刊ネットエイジ発行グループ 御意見・御感想は、nacr@netage.co.jpまで 当週刊ネットエイジの全文もしくは一部の文章をホームページ、メーリングリスト などメディアへ発行グループの許可なく転載することを禁止します。 Copyright(c) 1998 Netage Inc. All Rights Reserved. (株)ネットエイジ 150-0046 東京都渋谷区松涛1-6-9 小早川ビル TEL 03-5465-5280 FAX 03-5465-5286 URL http://www.netage.co.jp/ e-mail:info@netage.co.jp ____________________________________________________________